ミレニアルママ の買い物価値観
新子育てファミリーへのマーケティング戦略

あなたの商品やサービスのお客様(ターゲット)は誰ですか?
あなたの商品やサービスに、そのお客様が買いたい理由・選びたい理由はありますか?
お客様が変われば、好むテイストも、望む情報伝達手法も、提案して欲しい商品も全く異なります。そのためターゲット層の価値観を理解し、マーケティング戦略をたてることが重要です。
様々なターゲット層における購買行動の特徴・買い物価値観を紐解くシリーズ第一弾「ミレニアルママの買い物価値観」では、2025年には家族世帯の3割を超えると言われている20代から30代の若年主婦層=ミレニアルママたちの購買行動の特徴、買い物価値観について探っていきます。

ミレニアルママとは

1980年代から1990年代生まれのいわゆる「ミレニアル世代」と呼ばれる世代は、低迷する経済環境、インターネットが当たり前にある環境で育ち、これまでの世代とは異なる価値観があると言われています。
そんなミレニアル世代が今、20代から30代となり家庭を持つようになってきました。
末子年齢が0歳から10歳と、子育てに手がかかり子ども中心の生活を送りつつ、家事と子育て・仕事の両立に励み、小学校入学までに居住地を確定させたいという思いから住宅取得を考える時期でもあります。そんなミレニアル世代の子育て女性たちの購買行動の特徴、買い物価値観を、「消費にシビア」「身の丈を楽しむ」「男女平等」「デジタルネイティブ」という4つのキーワードで解説します。

ミレニアルママ 世代イメージ

1.「消費にシビア」モノよりコト消費が加速

1980年代から1990年代生まれのミレニアル世代。1992年にバブルが崩壊し、生まれた時から不景気で先行きが不透明な、低迷する経済環境の中育ってきました。「モノを買う・所有するのがステータス」という時代を知らない世代と言えます。
そして現在。物価は上がっているのに所得の右肩上がりは期待できない中、子どもの教育費にお金がかかり、老後の不安に備えて貯蓄も必要となれば、おのずと節約せざるをえないのがミレニアルママたちです。雑貨は100均などのプチプラ、洋服はユニクロなどのファストファッション、住宅は新築よりも費用を抑えられるリノベーションを好むといった消費傾向があります。
このように物を所有することに対しては合理的・効率的に考え、できるだけ現金は使わず貯蓄にまわしていますが、決して消費を楽しんでいないというわけではありません。

 

特にミレニアル世代の価値観をよくあらわしているのが「シェアリングエコノミー」という、物・場所・交通手段などのサービスを多くの人と共有・交換して利用する経済概念です。普通だったら自分の収入では買えないものが使えるという経済性、使いたい時だけ使うという合理性があります。
ジャパンネット銀行の行ったシェアリングエコノミーに関する調査(2018.2)によると、親世代はシェアサービスについて「お金を払っても自分の資産にならないことに抵抗」を感じたり、「人とのコミュニケーションを面倒」に感じていたりするのに対し、ミレニアル世代は、シェアサービスは便利なだけでなく「他ユーザーとの交流のきっかけになると思う」という好意的な声が半数を超えています。
ミレニアム世代は、モノを持たないという経済性・合理性だけではなく、他者との交流・繋がりという「コト(体験)消費」に価値を感じていると言えます。

 

〈コト消費も楽しむ シェアリングエコノミーの事例〉

サービス サービスコピー コト消費
エアークローゼット 毎日「なに着よう」と悩むあなたに月額制ファッションレンタル 好みを伝えたらコーディネートしてくれる=自分専属のスタイリストがつくという体験
メルカリ かんたんに売り買いができて、あんしん・あんぜんなお取引ができるフリマアプリ 家に眠っている物を、写真などを工夫して自分で売る楽しさ、売買におけるコミュニケーションの楽しさ

ミレニアムママの購買行動・買い物価値観①
「モノ」より「コト(体験・つながり・イベント)」消費

2.「身の丈を楽しむ」日常がエンターテイメント

消費にシビアなミレニアル世代が「身の丈にあった」生活をするというと、収入に合わせて分相応な暮らし、贅沢をしない、というように何かを我慢しているようなネガティブな印象があるかもしれませんが、実際のミレニアルママたちは、ポジティブに「身の丈を楽しむ」暮らしを送っています。
20代から30代の主婦向けの生活情報誌「Mart」(光文社)。読者の声からホームベーカリーやル・クルーゼ、食べるラー油、塩麹などのヒット商品が生まれたことでも知られています。その表紙には、「お手頃雑貨でできる 人を招かなきゃならない日のインテリア術」「100円雑貨・新活用法」「メルカリで毎日が楽しくなるホーム・リメイキング」「おうちカフェ風アレンジでコンビニスイーツはもっとおいしい」などのタイトルが並び、読者が日常を楽しむための情報が溢れています。そして、雑誌(マスメディア)からの一方通行な情報提供ではなく、「読者の声」で誌面が作られているというのも特徴です。
ミレニアルママたちは、お金をかけず自分なりのセンスでコーディネートすること、プチプラで材料を揃えDIYで作る過程、そんな自分の日常を発信・シェアすること、を楽しんでいます。
日常を楽しむ気持ちは、買い物にもあらわれています。コストコに友人と出かけて買った物をシェアすること、家族とショッピングモールに出かけ一日過ごすこと。家族や友人と買い物に出かけることが、休日のお楽しみ・レジャー的になっています。インターネットを使えば何でも安く早く買える時代に、わざわざ出かけるイケアやコストコ、郊外のショッピングモール。そこには、「身の丈を楽しむ」ミレニアルママたちの求める、日常をエンターテイメントにしてくれる体験があるのです。

ミレニアムママの購買行動・買い物価値観②
日常をエンターテイメントとして楽しめる体験を求める

3.「男女平等」時短を求め、無理せず頑張りすぎず

ミレニアムママたちは、学校教育・進学・就職、あらゆる面で「男女平等」という価値観の中で育ってきました。例えば、1993年から中学で、1994年からは高校でも家庭科が男女共修となり、男女一緒に生活に必要な技術と知識を学んできました。女性が大学に進学し、就職するのは珍しいことではなくなりました。経済的理由もありますが、結婚・出産しても仕事を続け、夫と家事や育児をシェアしながら「私らしく働く」。そんな理想を持っている女性は少なくありません。しかし現実は?
「男女平等」「女性活躍推進」といわれても働き始めると実感する不平等、結婚・出産というライフイベントにより働き方を見直さざるを得ない現状。育児休暇や時短などの制度があっても活用されない・活用しにくい環境、親世代や上司の価値観、残業が減らず家事のゴールデンタイムに不在でいつまでも家事や育児を「手伝う」感覚の夫、などなど現実と理想とのギャップは根深いものがあります。そんな状況にストレスを感じながらも、折り合いをつけているのがミレニアムママたちです。

2018年話題となったお母さん応援ソングがありました。ワンオペ家事・育児を推奨しているかのごとく、母親の自己犠牲が当然でそれが美しい、それが幸せなどだと訴えかける歌詞。この歌には「価値観の押し付けをしないで!」とSNSを中心に大きな反発がありました。一方でこの歌と比較し共感されたのがグリコアーモンドピークの広告「マイクロズボラ」です。家事に育児に毎日頑張っているけれど、手抜きもするずぼらな私を「そのままでいいよ」「完璧じゃなくていいよ」と応援する内容で、ママたちの共感を呼び支持されました。これは成功例ですが、先の応援ソング以外にも、女性・母親を応援する商品やサービスでありながら、これまで共感されたような「女性らしさ」や「母親らしさ」を押し付けるメッセージが、理想と現実のギャップにイライラを募らせる女性の不快感や反発を招き炎上する、というケースが増えているように思います。商品やサービスがどんなメッセージを伝えどう応援しようとしているのか、ミレニアムママたちは敏感に感じとっています。
そんなミレニアムママたちが求めているサービスは、ずばり「時短・利便性・効率性・編集提案」のあるものです。子育て世代の特に共働き女性はとにかく時間がありません。広い店内を歩き回って商品を探したり、たくさんの情報の中から自分に合うものを探したりするのは疲れるため、「私にぴったり」なものを選んで(編集して)提案して欲しいと願っています。理想とのギャップを埋めるために無理をしたり頑張りすぎたくない、そんな気持ちに寄り添う商品・サービスが求められているのです。

ミレニアムママの購買行動・買い物価値観③
時短・利便性・効率性・編集提案で、無理せず頑張りすぎない暮らしを応援して欲しい

4.「デジタルネイティブ」直感的・視覚的・共感性

ミレミアル世代は、学生時代や物心ついた時からデジタルツールが普及していた世代です。パソコンや携帯の普及とともに育ち、どこからでもいつでもインターネットにアクセスして情報を入手するのが当たり前の感覚を持っています。

ツールの発達とともに、私たちは膨大な情報に容易にアクセス可能となりました。ミレニアル世代は特に自分にとって必要な情報を効率的に収集するのが得意です。サーチエンジンよりもSNSを使い、自分が共感できるインフルエンサーから情報を得て行動にも影響を受けています。デジタルに詳しく複雑に使いこなしているというより、ユーザーインターフェイスの発達により、即時的で感覚的に使いこなせるもの、難しい文章や説明を読むというより写真や動画でより簡単に・単純に情報をキャッチできるものが支持されています。
インフルエンサーの中でも自分がちょっと頑張ったら手の届きそうな、リアルなストーリーが感じられる人の影響が強くなり、自らもスマホやタブレットを駆使してSNSで情報発信し価値観の近い仲間とつながることを楽しんでいます。彼らにとっては脈絡なく垂れ流される広告は雑音です。従来のマスメディアからの広告を情報源としていた世代とは、情報摂取の仕方、行動促進のされ方が大きく異なっているのです。

ミレニアムママの購買行動・買い物価値観④
直感的・視覚的に伝わる情報発信、マスよりSNSでのつながり・共感を求める

20代から30代の若年主婦層=ミレニアルママたちの購買行動の特徴、買い物価値観は、このようにこれまでの世代と大きく変わってきています。そんなミレニアルママたちに「売りたい理由」ではなく、ミレニアルママたちが御社の商品やサービスを「買いたい理由」が言えますか? 消費にシビアながら共感したものにはしっかりファンになり、自らも情報発信してくれるミレニアルママたち。ぜひ彼女たちを理解して、ミレニアルママをファンにするマーケティング戦略を立てていきましょう。


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