女性マーケティングとは

女性マーケティングとは

消費意欲が高く、成長が期待される一方で、複雑化、多様化し捉えにくくなった女性のココロをつかみ、女性が買いたくなる商品・サービスを生み出すマーケティングです。

女性マーケットの可能性

消費の8割を女性が購買決定していると言われていますが、女性マーケットは以下にあげる様々な要因から、今後もますます拡大すると考えられます。

（１）働く女性の増加

女性の就業率は増加し続け、少子高齢化に伴う労働力の不足や、女性の就業意識の変化などを背景に今後も増えると予測されています。また、男女間の賃金格差是正の動きから可処分所得の増加が見込まれ、消費活動も連動して増加することが期待されます。元来、男性に比べ消費意欲が高いと言われる女性ですが、“外で働く”ことによって生まれる新たなニーズや消費の機会が増えることも女性マーケット拡大の要因であり、今後もいくつものビジネスチャンスが生まれていくでしょう。

（２）多様化するライフコースと価値観

20代から59歳のライフコース別構成比をみると、専業主婦・ワーキングマザー・ワーキングシングルがそれぞれ2割～3割、DINKSも1割を占めていることからわかるように、女性のライフコースは多様化しています。結婚、出産、子どもの年齢、就業（正規、非正規）の有無や形態、経年などによって女性が担う役割、価値観、経済状況は大きく異なり、新たなマーケットを生み出しています。多様化、複雑化していく中で見落とされた女性の実態を深く細やかに分析し、ターゲットとする女性のニーズに応えることが女性マーケティング成功の鍵を握ります。

（３）ジェンダー平等実現への動き

2030年までの国際目標であるSDGsや、ESG投資の高まりから、今後ますますジェンダー平等の実現に向けた取り組みが国内外で強化され、注目されることが予測されると同時に、それらを加速させるためのビジネスにも期待が高まっています。特に女性の社会進出の阻害要因に挙げられる家事育児労働の軽減や、女性の健康問題を解決するヘルスケア、フェムテックなどの商品・サービスは新たなマーケットとして拡大していくものと考えられます。

女性マーケティングに必要な4つの視点

単に女性が女性の感性や視点で考えることが女性マーケティングではありません。女性マーケティングを成功に導くには、以下にあげる４つの視点から女性を理解し、あらゆる接点で起こる女性の心理、行動に着目し、望む未来を創造する必要があるのです。

■ 女性理解（市場理解）【知識】

男女を比較すると、生物学的特性、社会的・文化的特性に違いがあります。生まれ持った身体的な特徴や脳、ホルモンの違い、育った環境や教育、社会通念によって培われた役割意識や男らしさ、女らしさ。ジェンダー平等の観点による是非はありますが、私たちは確実にそれらの影響を受けて価値観を形成し、それが快・不快、好き・嫌い、モノの見方、感じ方、コミュニケーションの特性に現れます。女性の特性を理解すること。その上で、トレンドやライフスタイルの変化を捉え、情報をアップデートしていくことは、女性マーケティングにおいて非常に大切な要素。出発点でもあると考えます。
女性理解は、書籍やトレンド情報、データなど「知識」として学び、理解を深め、蓄積できるものです。

■ 顧客起点【事実】

２つ目の視点は、店舗（リアル＆ＥＣ）や広告媒体、ＳＮＳなどと顧客との接点で起こっている事実をすくい上げて読み解きマーケティングに活かすということです。とてもシンプルで基本的なことですが、マーケティングの現場ではうまく機能していないケースが多く見られます。顧客接点現場での顧客の行動や声といった客観的事実を正確に迅速にすくい上げるための仕組みの構築が重要ですが、その前に、そもそも何を知るべきかという問いを立てる力と、すくい上げた事実のどこに注目し、変化や特長、課題に気づけるのかといった力も非常に重要です。「人（感性＆分析力）」と「しくみ」 どちらが欠けても顧客起点は機能しません。ベースとなる女性理解やあとに述べる女性視点があれば、女性顧客の行動や声への気づきや理解が深まり、顧客起点をより精度高く機能させることができます。

■ 女性視点（顧客視点）【共感】

3つ目の視点は、女性（顧客ターゲット）の気持ちや見方、考え方、行動を理解し、限りなく顧客と同じ視点を持って見たり、考えたりすることです。ターゲットへの深い理解や共感が重要で、女性向けのマーケティングで女性マーケターの活躍が期待されるのはこのためです。間違ってはならないのは、女性であればマーケターが主観的に考えてよいということではないということです。マーケターは自身の価値観、主観を理解した上で、客観的に女性（顧客ターゲット）を分析し、あくまでも顧客の人物像に成りきって感じ、考えるという「客観性」と「共感性」の両方を兼ね備える必要があるということです。習得するにはトレーニングが必要です。

■ 未来視点【創造】

知識として得た情報も、顧客接点現場で起こった事実からの読み解きも、過去の出来事を分析し、マーケティングに取り入れるというアプロ―チですが、４つ目の視点は、企業と顧客が共創したい未来からあるべき姿を考えるというものです。顧客が叶えたい未来、なりたい自分の実現に向け企業としてサポートできることは何か？コトラーのマーケティング4.0の実践は、顧客と企業が理想の未来に向け共に育て、実現させるマーケティングです。
女性（顧客）にとって幸せな未来とは何か？その結果、社会はどのように変わっていくのか？過去や現在から未来へと視点を上げる。社会が変わろうとし、現実と理想のギャップが大きい現代においては大切なアプローチです。

女性マーケティングにおけるターゲティングの重要性

女性の価値観、ライフコースが多様化し、女性マーケットの可能性は広がりましたが、女性をひとまとめにして扇動し大量生産、大量消費を狙うことはできなくなりました。どんな価値観で、どんな生活をしている女性に、どんな価値を提供し、どんな幸せを手に入れてもらうのか？多様性の時代の女性マーケティングでは、ターゲットの絞り込みやペルソナの設定がより重要で、そこには深い女性理解が必要です。そして商品の機能・特徴ではなく、ターゲットのココロをつかみ、どのような幸せをつかんでもらうのか？＝ベネフィット（機能的価値、情緒的価値、自己実現価値）は何かを明確にする必要があります。

女性マーケティング成功には人材育成が不可欠

大量の情報やデータを手に入れることができても、女性マーケティングは成功しません。また、女性が行うから成功するというものでもありません。マーケティングの要は“人”。常にアンテナを張り、変化や兆しに気づく力（感性と女性理解）、分析、構築、プレゼン力、そして周囲を巻き込んでゆくリーダーシップ。そういった力を備えた人材の確保、教育が必要です。また、マーケティングを一部の人材の範疇に留めず、顧客接点現場で働くスタッフから製造、営業まで広く、マーケターとしての意識と知識を浸透させ、組織としてマーケティングを行っていくことでより精度高く、変化に即対応できる好循環なマーケティングが可能となります。

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