事例:株式会社ニック様

スタッフが輝き女性がファンになる
ブランド構築 プロジェクト

2013年2月より、女ゴコロマーケティング研究所が「女性をファンにするブランド構築」をサポートしている株式会社ニック。平成9年をピークに毎年減少するクリーニング店の数。家庭消費支出額にみるクリーニング代もピーク時の半額以下に。業界の市場規模が縮小し価格競争に同業他社が疲弊していくなか、安易な値下げではない「顧客にとっての価値」を見つめ直す独自のブランド構築で新たな市場開拓に挑戦している。キーワードは、「お客様へのブランド訴求」と「社内へのインナーブランディング」。両者の相乗による成果とは。プロジェクトの全プロセスを紹介する。

ブランド構築 プロジェクト<
ファッションのお手入れ専門店 ニック
東京都町田市玉川学園2-6-7

プロジェクト背景

理念体現のために社長が決断した 女性マーケット拡大への舵取り

取次店型が主流のクリーニング業界にあって、株式会社ニックは、接客カウンターと工房が一体となった「ユニットショップ」という業態をとっている。接客カウンターで丁寧にお客様のお話しを聞き、そのこだわりを工房につたえ、国家資格であるクリーニング師の資格を持ったプロフェッショナルが素材やデザインに合わせた最適なお手入れをする。商品のお渡しの際はその場で確認していただき、気になる箇所があればただちに対応する。風合いとシルエット、ファッションアイテムの「美しさを甦らせるお手入れ」がニックの信条だ。

ユニットショップという業態は成功したが、「美しさを甦らせる」という理念を掲げる一方で、売上の8割は依然、男性もののワイシャツやスーツが占めていた。「自分たちのサービスがお客様に正しく伝わっていないのではないか。」「来店の8割は女性。正しく伝われば女性商品がもっと増えるはず。」今後も市場規模の縮小が予想されるなか、株式会社ニックの西川社長は、女性マーケット拡大への舵取りを決断していた。

女性スタッフの力をもっと活かしたい 社員自らが考え行動する組織へ

これまで「美しさを甦らせる」という理念をはじめ、事業戦略立案とその遂行は、社長自らが先頭に立って旗をふってきた。しかし女性マーケットを拡大していくためには、従来のトップダウン型経営ではなく、社員自らが考え行動できる組織づくりが必要だ。なかでも、ターゲットである「女性」スタッフが自らの感性を活かせるように。

そう考えていた西川社長からのミッションは、女性をファンにするブランド構築とともに、女性活躍推進を柱とした組織改革をすることだった。

STEP1
コアメンバー育成~自信と連帯感の強化

本ステップの施策

  1. 1強み弱みに気付き課題を明確化する覆面調査
  2. 2女性市場拡大を目指したブランド強化の方向性提案
  3. 3プロジェクトチーム発足

理念は現場に浸透しているのか? 覆面調査で課題をうきぼりに

「美しさを甦らせる」。もともと、ニックには従来のクリーニング店とは一線を隔した、ファションケアの専門店としての理念があった。社長のトップダウンで発信されていたこの理念が、現場である店舗にどの程度浸透し、実践されているのか。プロジェクトは現状を確かめる覆面調査からスタートした。

高い品質と丁寧なサービスは、「これまでのクリーニング店と違う!」と調査者に驚きと感動を与え、スタッフが「当たり前」と思っていたサービスが自分たちの強みであるという発見となった。一方で、丁寧ではあるが、対応が受け身でお客様の気付いていない潜在的なニーズにお応えするような「先回り提案」ができていないこと。掲げる理念が13の店舗・100人を超えるスタッフやお客様に充分に浸透していないというコミュニケーションの不足が課題として判明した。

品質・お手入れの考え方をお客様に啓蒙する「お手入れハンドブック」は、スタッフ教育ツールとしても活躍。

コンセプトとやるべきことを明確に 小さな成功体験の積み重ねでスタート

覆面調査を踏まえ、改めてブランド構築によりニックが「目指す姿」を、【汚れたものをきれいにするだけでなく、着心地やファッションポイントを活かすお手入れを提案し、洋服のお直しや靴・鞄に至るまでトータルなお手入れのできる"ファッションのお手入れ専門店"】と明確化した。

明確となったコンセプトに基づくはじめの一歩は、ニックの品質・お手入れの考え方を伝える「お手入れハンドブック」を作成すること。お客様へのコミュニケーションツールとして整理することが、スタッフにとっても漠然としていた【ニック品質】を理解することに繋がった。さらに、季節ごとに潜在ニーズを掘り起し、先回り提案を行う「情報誌」、情報誌と連動した「インナーキャンペーン」を作成・実施。やるべきことと成果が見える化し、短いスパンで目標設定をし、お客様の反響や達成感を得ることで、長期戦となるブランド構築のモチベーション維持・向上を図った。

品質・お手入れの考え方をお客様に啓蒙する
「お手入れハンドブック」は、スタッフ教育ツールとしても活躍。

核となる2つのチームは、共働で連帯感を強化しつつ、
マーケティング力を鍛える

プロジェクトを推進するための組織として、本部女性スタッフと統括マネージャーで構成する「ブランド強化委員会」と、若手社員を中心にメンバーの半分に女性を選出した「市場創造委員会」という2つのプロジェクトチームを発足させた。「ブランド強化委員会」は、社長の理念に基づきどう行動するかを、先頭にたって考え実行していく組織。店舗(コンセプト、メニュー、訴求ツール)・人(教育、女性活用推進)に関する戦略立案を、リーダーシップやマーケティング力を向上させる研修を交えながら実施する。

「市場創造委員会」のミッションは、クリーニング店の既成概念や他店との価格競争対策としてではなく、"ファッションのお手入れを通して、よりおしゃれを楽しむために"というテーマで季節の先回り提案し、お客様を啓蒙していくことで新たな市場を創造すること。具体的には、情報誌の作成、インナーキャンペーンの企画・運営、全店の教育・底上げのための活動を行う。

プロジェクトでは、ワークショップを交えながら
各自のマーケティング力を鍛えていく。
お客様の大切にされているファッションポイントが美しく再現されているか。女性のお客様の「幸福感」に寄り添う姿勢が、ファンを創る。

本ステップの効果

  • お客様へのツールを、スタッフ教育ツールとしても活用
  • インナーキャンペーンを通じたノウハウ共有でスタッフのレベルアップ
  • インナーキャンペーン対象商品の売上が前年の約4倍に増

「お手入れハンドブック」や「情報誌」などコミュニケーションツールの制作を通じて、コンセプトに基づく具体的なサービスやお客様へ提案する価値観についてスタッフ自らが考え、理解することができた。

インナーキャンペーンを通じて、13店舗それぞれのノウハウ(おすすめトーク、店頭演出、POPなど)が共有され、スタッフのレベルアップと共に、売り上げ貢献を果たす。キャンペーン期間後も長期的に効果を発揮しており、チラシや割引など一過性の販促効果ではなく、スタッフの提案力アップ、お客様への商品理解の浸透がうかがえる。

インナーキャンペーン対象商品「ピュア」の前年同月との受注件数比較。キャンペーン月である9月以降も前年を上回る成果をみせている。

STEP2
ブランド宣言!ビジュアル化で意識変容を促進

本ステップの施策

  1. 1スタッフ自らが考え行動するためのクレド作成
  2. 2スタッフが主役の社員総会プロデュース
  3. 3スタッフの意識を大きく変えるCI 作成

社長の思いを社員一人一人の思いに スタッフが考えた渾身のクレド完成!

短いスパンでの成功体験、ツールの完成や売上アップといった目に見える成果を重ねるごとに、スタッフに自信が生まれチームとしての連帯感も育ってきた。

そんな中完成したのが、ブランド強化委員会立ち上げ当初からのミッションの一つ、自分たちの意思決定や行動の拠りどころとなる「クレド」だ。会社の「目指す姿」自分たちの「ありたい姿」そして「お客様への約束」。メンバーで何度も議論を繰り返し3 か月かけて完成させた。

完成時には、一方的な配布ではなく、委員会メンバーが自らが各店を周り説明会を実施。反応をダイレクトに確認しつつ「社員自らが考え行動する」ことを実践してみせた。

完成したクレドは、ニックが目指すこと・お客様との約束・私たちの在り方・スタッフへの約束で構成。
解説ページも含め全10ページの大作だ。

主役はスタッフ!トップダウン型の社員総会を変革

株式会社ニックでは、年に2回パート従業員を含む全スタッフが一同に会す社員総会を開催してきた。日頃各店に分かれているスタッフが、顔を合わせ会社の方針を伝える重要な場として、創業以来大切にしてきた。ただ、社長や店長の発表の場としての色合いが濃く、一方通行になりがちだった。

この総会を、スタッフのモチベーションアップとスタッフへの感謝を示す場として位置づけ、ボトムアップ型に変革した。総会の企画・運営は、社長から「ブランド強化委員会」「市場創造委員会」に権限移譲。ワールドカフェやコミュニケーションゲームなど参加型のプログラムや、スタッフの発表、表彰などを導入するなど「スタッフが主役の進化するニック」をスタッフに体感させていった。

ワールドカフェでは、初めての試みに不安顔のコアメンバーをよそに、スタッフは活発な意見交換を楽しんでいた。

ブランドコンセプトを内外に発信 CI変更で新たなステージへ

「ファッションのお手入れ専門店」としての本格的な転換を行うためCI変更を実施。各店の看板や名刺、チラシやポスターといった販促ツールに至るまでイメージを一新。「クリーニングからファッションケアへ」汚れを落とすだけではなくお客様の想いに寄り添ったお手入れをします、というお客様への意思表示であると同時に、社内に向けて想いを共有し意識変容を促した。

ニックのエヌ(N)を女性の憧れ・きらきらとした美しさを象徴するティアラの形に見立てたシンボルマーク。真ん中のアイロンのシルエットは、職人的な技術力とニックの誇りを表現。ロゴタイプでは、社名の「i=愛」を今まで以上に躍動させ、お客様の想いに寄り添う姿勢、愛情を表現。はつらつとした明るさがありながら、清潔感があり落ち着き・気品も感じるターコイズブルーは、ニックの宝であるスタッフ像をイメージした。

CI変更前の玉川学園店(左)とCI変更後の玉川学園店(右)の外観。
「ファッションのお手入れ専門店」にふさわしい洗練された店舗に。
CI 変更を告知するためのコミュニケーションツール。
メッセージカード、ダイレクトメール、折込チラシなど。
店内のメニュー看板やお品物の包装用袋まで、
新しいCI へと統一された。

本ステップの効果

  • 社員の手で完成させたクレド
  • スタッフ全員のベクトルを合わせモチベーションを上げる社員総会
  • ブランド強化のシンボルとなるCIの完成

社員がクレドを作成することによって、社長が掲げていた経営理念が社員の腹に落ち、自発的に考え行動するベースとなった。店長・スタッフからも「自分たちがやっていること、目指したいことを言葉にしてくれたことで迷いがなくなった」という声が相次いだ。クレドをベースに企画・運営される社員総会は、スタッフ全員が思いを共有する場として、回を重ねるごとに進化。笑いあり、涙あり、学びありの感動イベントとして盛り上がっている。先頭に立つ「ブランド創造委員会」「市場創造委員会」のメンバーの表情からは自信と進化を楽しんでいる様子がうかがえる。

社員総会では、インナーキャンペーンの優秀店舗を表彰。受け取るパートスタッフからは、クレドに添うためにどう工夫したかが語られた。

STEP3
自立する組織と仕組みの強化

本ステップの施策

  1. 1年間販促計画の立て方と継続の仕組みづくり
  2. 2個別委員会の活動開始
  3. 3人材を人財にする評価制度の見直し

顧客の動きを分析し先回りして考える 効果的な販促を計画できるように

折込チラシやポスティングチラシ、店頭で配布するサービス紹介ツール、お客様に送付するダイレクトメール...従来こういった販促ツールは必要に応じてその都度制作されていた。シーズン性や顧客のニーズ・ウォンツを考慮した、戦略的な販促計画・ブランド強化のためには、ブランドマネジメントの観点に立ったコミュニケーションツールのデザインから、適したツールのピックアップ、店頭接客との連動までを計画的に実施する必要がある。

こういった販促計画をスタッフ自らがPDCA を回しながら恒常的に実践できるよう「ツール制作ガイドライン」を定めてマニュアル化。新規客開拓から定着、ファン化へのストーリィを実践できる仕組みを強化していった。

クレドの共有により明らかになった課題を
スタッフ主導の小委員会で解決!

クレドにより自分たちの目指す姿が明確になったことで、現場での具体的な課題も明らかになってきた。クレドの実践のためにスタッフからあげられる課題と、販促計画を実施する上での課題。これらを解決するために、「ブランド強化委員会」「市場創造委員会」のメンバーが自発的に行動する個別委員会がスタート。3年後に目指すゴール設定を共有したうえで、半年ごとのマイルストーンを実現するために、お互いに連携しながら品質、接客の向上と効果的な販促、それらを可能とする環境整備を進めている。

進化したプロジェクトチーム構成

未来にむけ、スタッフが輝く創造集団へ!人事評価制度の見直し

従来あった評価制度は、クリーニング技術や接客など、決められた事柄を決められた手順と品質でこなせているかを重視する傾向にあった。

ニックが新しいブランド価値を創造していくという舵取りをした時、求める人材像はよりクレドにふさわしく、お手入れ文化創造のために失敗を恐れず自ら考え行動できる人材であるべきと定義した。
「ブランド強化委員会」が中心となり評価制度の見直しに着手。「褒め面談」「輝きシート」といった新しい試み、女性活用や多様性を活かした能力活用を促進するためのステップアップ制度を進めている。スタッフのモチベーションを維持しながら、未来に向かって新たな価値を作る、創造集団への風土づくりが始まっている。

本ステップの効果

  • 戦略的な販促計画・企画・実施の浸透
  • 自力で課題を見つけ行動する個別委員会の活動
  • 初の女性店長、女性役員の誕生

2014年9月現在、約2年間の取り組みの中で、委員会メンバーの中から初の女性店長、女性役員が誕生。これまで男性主体だった組織の中で、女性の意見が重視される風土も育まれてきた。目指すはコンサルタントがいなくとも自力で課題を見つけ、革新のために考え、行動する組織。ニックはそのためのステージをのぼりつつある。ファションケア文化を根付かせ、全国にいるクリーニング難民を救うため、既成概念にとらわれず新たなサービス、業態開発に向け、株式会社ニックの挑戦は続く。

ロールモデルとなる女性店長も誕生した
Client's Voice
ブランド委員会
(管理本部 取締役)
薄井純子さん

私は本部スタッフとして、ブランド強化、市場創造の両委員会に参加しています。私自身が感じるお客様目線を大切にしながら、ブランドマネージャーとして試行錯誤の毎日です。木田先生の指導は、「何となく」が通用しない厳しい面もありますが、その都度目的や成果に立ち戻らせてくださるなど気付きが多く、信じて間違いないという安心感・納得感があります。

クレドが形になり、現場の皆さんに共感してもらえたこと、スタッフの素晴らしさを再確認できたことが本プロジェクトを通じて感じた最大の喜びです。今後もスタッフの個性を発揮できる環境づくり、前向きな意見が自由に伝えられる雰囲気づくりを大切にしていきたいと思っています。


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