女ゴコロを学ぶ Vol.331
女性の生き方と年収の壁
あけましておめでとうございます。
女ゴコロマーケティング研究所の木田です。
新年、1本目のメルマガは少し重めのテーマですが
女性のこれからを語るには避けては通れない
「年収の壁」について考えてみたいと思います。
昨年末は
国民民主党が掲げる
「所得税の非課税枠を103万円から178万円に拡大する」という主張に対し
様々な議論がなされましたね。
減った税収をどうすべきかという課題はあるものの
基礎控除額を103万円と設定した1995年と比較して
現在の最低賃金が1.73倍になっていることから
控除合計額も「103万円×1.73=178万円」に引き上げるべきという
主張は理にかなっていると感じます。
所得が増える分、消費が活発になるのではないか?
女性が多くを占めるパートタイマーの働き控えが解消され
労働力不足を補えるのではないか?
という期待もされています。
一方で「年収の壁」には103万の所得税の壁の他にも様々なものがあります。
■130万の壁 「社会保険料」発生 (以下、世帯主を夫、配偶者を妻と仮定)
現行では、妻の年収が130万未満であれば、夫の社会保険の扶養内とされ
夫の基礎年金の半分を妻が受け取ることができる(厚生年金は夫個人のもの)
※妻の年収が130万の場合(現行では)
社会保険料として19万が引かれる(所得税は3,500円、住民税は18,000円)
■106万の壁
一定条件下(従業員51名以上、2か月以上の雇用等)では上記が106万で発生
■150万の壁 「配偶者特別控除」が減額
現行では、妻の年収が150万未満であれは配偶者特別控除が満額の38万円
受けられ、150万を超えると減少。201万を超えるとゼロになり
世帯主(夫)の手取り額が段階的に減る
■配偶者手当の壁(103万、130万、150万等、企業によって設定)
妻の年収が一定額以下の世帯主(夫)の給与に企業が配偶者手当を
上乗せするシステム。廃止する企業が増えつつあるものの
依然、5割以上の企業で支給
これらが
「夫の扶養内で働かなければ損をする」
という考え方の根源です。(長い目で見ればそうとは言い切れないのですが…)
給与から無条件に税金や社会保険料を差っ引かれている皆さんにとっては
理解しにくい話ですし
未婚者やシングルマザーの方にとっては
誰かの配偶者ってだけで優遇されて不公平な感じがする
といった印象を持たれたかもしれません。
しかし、これらの制度全般は
高度成長期以降、製造業が力を持っていた時代に
重労働に耐えうる男性を主体とした働き手が仕事に邁進できるよう
女性には、家の中で家事、育児、介護といった家族ケアに専念させる。
それが効率的でスタンダード、幸せな生き方であるといった
社会通念、ライフスタイルを促進するため
政治や経済論理がつくりだしたシステムでもある
ということを忘れてはなりません。
子育て世帯や勤労を余儀なくされる学生さん
家族のケアで働くことが儘ならない人たちの暮らしが
これ以上苦しくなることは絶対にあってはならないことですが
女性が自分の意思で
自由に生き方を選択できるようになるためには
今、目の前のことだけでなく
将来的なこと(婚姻解消の可能性や老後など)も踏まえ
ベストなあり方を私たち自身が
自分ごととして考える
タイミングが来ているのではないかと思います。
私の個人的な思いとしては
少なくとも社会保障制度は
扶養される配偶者としてではなく「個人」単位をベースとし
例え、婚姻関係を解除したとしても生活していける保障が手に入るようにする。
そのかわり、結婚しているかいないかに関わらず
子育てや高齢者の在宅介護を行っている世帯に関しては手厚くフォローし
所得が減った分を補う。
離婚した場合も
子どもや高齢者と生計を共にする世帯主にそのままフォロー分を移行させれば
貧困世帯の多くを占める
シングルマザーとその子、ケアラーの救済にも繋がるのではないでしょうか…。
(なにせ、日本は養育費未払い率が8割にも上る残念な国です)
いずれにせよ。
今回の「年収の壁」問題が
女性が女性の生き方を考えるきっかけとなれば嬉しいし
間違っても
立場の違う女性同士が反目し対立しないで欲しいと思います。
女性の分断は、どこかの誰かの思う壺なのですから。