女性プロジェクト 成功の秘訣

1.なぜ 女性プロジェクト なのか

女性市場への期待

SDGsやフェムテック市場への注目など世界規模で女性を取り巻く環境は変化しています。日本でも少子高齢化や所得・景気低迷など国内需要が伸び悩む中、今後も伸びるであろう女性市場に注目が集まっています。働く女性が増えることによる所得アップや仕事、家事、育児の両立に伴う困りごと、主婦を専業とせず30代、40代、50代と働き続けるライフスタイルが新たなニーズを生み出しマーケットを潤すことに期待がもたれているのです。

そして、女性は家族で消費される物の購買決定権を握っています。企業の一方的な宣伝、広告よりもクチコミによる購買が注目されるようになって久しいですが、女性のクチコミ力は男性の3倍あると言われ、クチコミによって購買が促されやすいのもまた女性です。このように、女性市場への期待とは、単に個人としての消費による経済効果だけでなく、マーケットを動かす影響力にあると理解すれば、女ゴコロをつかむ商品・サービスの開発を行うことは企業にとって、また日本経済にとっても最重要課題だと考えられるのではないでしょうか。

多様化、多面化する女性の生き方

一口に女性と言っても、その生き方は非常に多様化しています。一昔前のように20代半ばで結婚し、子どもを産み、子育てに専念する専業主婦が女の幸せと言われていた時代は終わりました。30代女性の未婚率は3割を超え、また、結婚しても子どもを持たないDINKSも増えました。出産しても仕事を辞めずに続けるワーキングマザーも国の施策に後押しされ、年々増えています。同じ年代でも、生き方も違えば価値観も違います。

特に、ライフイベントによって生き方が左右され、ライフコースが細かく枝分かれしていく女性は、男性よりもより多様化傾向にあります。消費とは今を生きる不満、不足、不便、不快、不安という“不の解消”を目的とするものであり、また、未来に望む姿に近づくための手段であると考えるならば、これからの女性向け商品・サービスの開発は、どのような生き方をし、どんな“不”を抱え、どのような未来を望んでいる人に向けてどんな解決を提供するのか?どのようにココロを満たすものを提供するのか?をマーケティングしていかなければなりません。同じ30代でも既婚か未婚かでは抱える“不”が違って当然ですし、既婚でも子どものあるなし、子どもの年齢、就業の形態によっても“不”は違うのです。

公私混同の女性視点の活用を

これまでの商品開発では、たくさんの定量データを分析し、より成功確率の高いものを開発してきました。効率化、システム化の中で無駄なモノはそぎ落とした最大公約数的なモノづくりは、最も確率の高い方法に思われていましたが、企業間の情報力、技術力が拮抗する現代においてはコモディティ化(同質化)を加速させ、価格競争を激化させるといった悪循環を引き起こしています。また、消費者の多様化する価値観の前では「そこそこいいけれど、今すぐ買いたいと思うほどの強い欲求に突き動かされない」といった購買意欲への決定打に欠ける状況となっています。

多様化し、モノや情報が溢れ、モノに対する渇望がない現代においては、「これは、私のためにつくられたものだ」という強い共感がなれければ、モノは売れません。そこで重要になってくるのが、データでは見えてこない女性視点なのです。

女性視点による商品開発は、広く一般にデータ化される前の自分(女性)自身や、子や親、友人、つながりといった身近な人々、コミュニティの“不”や“兆し”に気づき、共感することによって課題を解決するための商品、サービスの糸口を見つけていくといったアプローチが特徴的です。それが世の中の同様に苦しむ人、望む人々の強い共感を呼び、クチコミに火をつけ、ヒットにつながる傾向があります。生活・家族・地域密着の視点から、埋もれていた需要をビジネスとして掘り起こすのです。

データだけでは消費者のココロが読めない、広告宣伝だけでは消費者のココロが動かせない今、企業と消費者は対峙するのではく、企業は消費者の心の中にあるインサイトに深く潜り込む必要があります。女性がターゲットの商品を開発するのであればなおさら、ターゲットである女性に対して共感力の高い女性マーケターの存在が重要になると言えるでしょう。技術や企業組織の視点から企画するのではなく、本当に自分がお金を出してでも買いたいと思うもの。自分の家族や友人に勧めたいものを企画する。よい意味での公私混同のアプローチが重要です。

2.女性マーケターの育成が急務

女性マーケティングの課題と対策

では、女性による女性視点の企画ができれば、ヒットする商品をつくり、世に送り出すことができるかといえば、残念ながらそうではありません。企画をカタチにするためには、社内の様々な部署や外部企業との連携、協力が必要となり、開発、営業、協力会社などとの多岐に渡る交渉やシステム構築が重要となります。特に決裁権のある課長以上の役職者の9割を男性が占める今の日本では、これまでにない女性視点の着想で企画をしたとしても社内稟議が通らなかったり、協力体制を得ることができなかったりと、その多くが志半ばで頓挫するか、社内を通過する中でこれまでの既成概念にとらわれた妥協の産物になってしまうといった例が後を絶ちません。ダイバーシティ&インクルージョン推進の途上にある今の日本では、女性視点による着想と男性型組織の中でのシステム構築の連携を意識的に図り、共創を行うことが必要不可欠なのです。

女性プロジェクト の課題

また、女性ならば、必ず女性のココロがわかり、ヒットする商品の企画ができるのかというと、答えはNOです。女性の多くは、女性視点をマーケティングに活かすための訓練を受けていません。そもそも女性視点活かすとはどういうことなのかを自覚している女性は少ないというのが現実です。会社から一歩出れば、消費者の一人として街に出て、店や商品、広告宣伝、クチコミなどの情報を見聞きし、買い物をしたり、家族や友人たちと過ごす。そのありとあらゆる体験の中に女性視点を活かしたマーケティングのヒントとなる宝が眠っていても、それに気づくためのアンテナが立っていなければ、それは単なる日常の繰り返しです。まずは、五感を研ぎ澄ませ、自分のココロの動きに敏感になること。そして身近な人たちのココロが動いた瞬間に興味を持つことが重要です。気づくことができれば、その理由について考え、その結果もたらされる行動、事象について分析します。「気づく」→「考える」を繰り返しながら頭の中に女性視点のアイデアの引き出しをどんどん増やし、傾向ごとに分類してストックしていくという作業が必要です。そして企画の際にはそれらをアウトプットしさらに考察を重ねていくのです。

先にも、女性視点の開発にはいい意味での公私混同が必要と述べましたが、プライベートでの体験やそこで得た感情、家族や友人などのネットワークで手に入れたペルソナ情報をマーケティングに活かす発想力や企画力を培う訓練が非常に重要なのです。特に、男性の多い職場で仕事ができると評価の高い女性であればあるほど、自分自身の感性、感覚を封印し、組織の中で優先される男性的な価値観にあわせて物事の感じ方、考え方、行動を身につけていっているものです。仕事の自分と、プライベートの自分を厳格に分けてきた人ほど、自身の感性・感覚を開放し、ライフをワークに活かすという発想の転換、訓練が必要となるでしょう。

3.女性マーケティングプロジェクトに女性を巻き込む利点

女性マーケティングプロジェクトのメンバーに女性を入れるべきと言うと「社内にマーケティングのできる人材がいないから難しい」という話を少なからずお聞きします。中には、企画会社や広告代理店の女性チームに企画アイデアを委ねてしまうという事例もあります。しかし、私は、社内の女性を巻き込むことにこそ利点があると考えます。例えマーケティングの経験がなかろうとも、柔軟性や好奇心などの素養があり、自社商品に対する熱い思いがあれば、先に述べたような訓練で十分に活躍できる人材になりえる。そういった事例を、私自身、数多く見てきました。そしてそれらの経験から、女性マーケティングプロジェクトに女性を巻き込む利点を2つ上げたいと思います。

メリット1.女性視点を"いつでも"マーケティングに生かすことができる

企画会社や広告代理店と契約をし、お金を払っている間だけ、何かを形にできるというのでは、変化のスピードが速いマーケットに迅速に対応し、最適なアプローチをし続けることはできません。社内の女性が日々、自分自身の日常生活での様々な体験や情報、肌で感じる環境の変化をタイムリーにマーケティング活動に活かすこと。“毎日が問題提起”、“毎日が企画”を継続していくことが大切です。そういった女性の声を日常的に、しっかりと取り入れていけるマーケティング体質の組織をつくり、社員に動機づけしていくことも合わせて重要なことです。対象は何も企画・マーケティング部門の社員に限られることではありません。日々、販売の現場で直接お客様と接するスタッフにもマーケティング活動に参加してもらう仕組みをつくったり、社内だけで難しければ社外にそういったモニターチームをつくるなど、やり方はいくつも考えられます。

メリット2.企業の姿勢にお客様の共感が集まる

SDGsやESG投資、女性活躍推進に注目が集まっています。“女性が一層幸せになるためにこんな商品をつくっています”と主張する企業の女性がイキイキと活躍していなければそれは嘘になります。女性社員たちが、世の中の女性が本当に喜ぶものは何かとアイデアを出し合い、自分たちが本当に欲しいと思うものを妥協せずに作った。そんなストーリィにお客様は共感し、ブランドに対する好感を持ちます。

今は企業の実情が透けて見える時代、インターネットの普及により個人が情報発信し、媒体になる時代です。内と外に矛盾を抱えていれば、必ずと言っていいほど外に伝わってしまいます。「女性マーケティングに取り組む=女性活躍推進」であると捉えましょう。そして、積極的にその取り組みを社内外にPRしていきましょう。女性市場への注目と共に女性活躍推進は時代のテーマです。メディアや消費者の注目があつまり、そうやってつくられた商品を後押ししてくれることでしょう。そして、そのことが優秀な人材の確保にもつながります。実際、女性マーケティングに取り組み、社内の女性が活躍することで新たなリーダーを生み出し、このような取り組みを企業の情報発信やメディアで見た人材がが、自分もこの企業で働きたいと意欲をもってやってくる。まさに好循環が起こるのです。

4.女性プロジェクト における管理職の役割

女性プロジェクト の失敗要因は「放任」と「過干渉」

女性プロジェクトの成否には、そのマネジメントに当たる管理職の力量が大きく左右します。女性たちが新たな切り口、発想で女性向け商品、サービスの企画をしたとしても、世に産みだし、流通に乗せるためには、社内外で様々な難関を突破し、協力を仰いで行かなければなりません。そのアイデアが斬新であればあるほど、前例のない取り組みは大きな壁に阻まれるでしょう。そのような時にこそ、担当管理職は陰日向で力となり、組織を巻き込み、調整し、推進していく強いリーダーシップとマネジメント力が必要です。何から何までメンバーに丸投げし、放任するようでは、プロジェクトは失敗します。また、プロジェクトの遂行を気に掛ける余り、女性メンバーの発想に口を出し過ぎるのもよくありません。よかれと思って過去の成功体験や業界または自社の慣例、自分自身の感覚でアドバイスしたことが、発想や企画の芽、しいては前例のないことにチャレンジする意欲や積極性を摘んでしまうということが多々見受けられます。目的、目標、マイルストーンを共有し、客観的な事実情報の提供などをした上で、企画段階では干渉しすぎないことが重要です。

管理職に求められる力

先に、女性プロジェクト の成否には管理職の力量が大きく影響すると述べました。では、具体的にどんな力が必要なのでしょう。ここでは、特に必要と思われる3つの力についてお話します。

(1)既存の組織・人との橋渡しをする

組織内での位置づけによっては、プロジェクトが孤立してしまうことがあります。特に若手や女性メンバーは経験値が少なかったり、組織内のネットワークやパイプが少ない場合が多いので、何かやりたいと思った時にどこにどのように根回しや相談をしたらいいのかわからないことがあります。多大な期待のせいで委縮してしまいメンバー自身が周りに協力を要請しにくいといった現象も生じがちです。

そこで、プロジェクトのリーダーとなる管理職は、プロジェクトの必要性や全社に及ぼすメリット、周囲の部門にはどういった協力体制を仰ぎたいのかをちんと伝え、橋渡し役になり、適材適所、必要な人材や部署をプロジェクトに巻き込むことが重要です。女性プロジェクトを孤立させることなく、周りの組織、プレイヤーと有機的に結び付けていく。そのような役割を担う必要があります。プロジェクトが軌道に乗り、メンバーが育ち始めたら徐々に世その役割を委譲していくというプロセスを踏むべきです。

(2)心理的安全性の高い環境をつくる

女性はこれまでの社会通念の影響から、実力があっても控えめに行動する傾向があり、それが「自信のなさ」や「消極性」に見えてしまうことがあります。また、成功を「周りや運がよかっただけ」と捉え、失敗すると「私の頑張りが足りなかった」と考える傾向が特に優秀な女性に見られるとも言われています。社内の期待や注目が集まるプロジェクトでは、これまでと違ったプレッシャーが足かせとなり、自由な発想や積極性をさらに阻む要因となりますので、管理者はまず心理的安全性の高い環境づくりを行う必要があります。プロジェクトからの提案を頭ごなしに否定せず、結果を罰することはないという約束をプロジェクト内外の共通認識とし、これまでにやったことがないことや変革は大歓迎であるという意志を表示し、プロジェクトに対する期待と役割を明確に伝え、安心して活躍できるステージをつくりましょう。

(3)小さな成功事例を積み上げる

女性プロジェクト にはとかく大きな期待が集まりがちですが、大きな目的、目標を決めたら、ゴールに至るまでのマイルストーンを決めて、共有し、ことあるごとに今、私たちはどこにいるのか?どこへ向かっているのか?を確認しながらプロジェクトマネジメントを行うことが重要です。このことは特にプロジェクトリーダーが担えるよう丁寧に指導し、連携していくべき点です。マイルストーンごとに小さな成功体験を積み重ねたメンバーには少しずつ自信がついていき、その体験がメンバーの意欲と成長を加速させます。1年もすればその変容に驚くことでしょう。また、組織の中でのプロジェクトへの評価や影響力も少しずつ高まっていくため、社内の協力体制も盤石なものとなり、プロジェクトの規模も質も加速的に向上していきます。プロジェクトが走り出したら、失敗からスタートさせてはいけません。どんなに小さくても成功からスタートさせるのが重要です。

5.これから女性プロジェクトに取り組む企業様へ

全社員がマーケター意識を持ち、自ら考え行動する風土づくりを

マーケティングは専門分野を勉強してきた一部の人がデスクワークをして完結するものではありません。現場で実際にお客様と接している販売スタッフ、パートや契約社員の方、事務職で現場のお客様と実際には接点のない方も自社とステークホルダーにとって有益になるよう、社員全員がマーケティングに関わる、そういった風土づくりを目指すべきと考えます。女性マーケティングプロジェクトを推進することは単なる商品開発ではなく、変化に強く、柔軟なイノベーション体質の企業に生まれ変わること。今からでも遅くはありません。そのためにまず一歩踏み出しましょう。


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イノベーションを生み出す人材・組織へ

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